もの忘れ・認知機能の低下——
「年のせい」か「病気のサイン」か、見分けましょう
「最近、もの忘れがひどくなった気がする」「同じことを何度も聞くと家族に言われた」——こうした変化を「年のせいだから仕方ない」と放置していませんか?もの忘れには、加齢による自然な変化と、治療が必要な病気のサインの2種類があります。また、認知症に似た症状でも甲状腺機能低下症・うつ病・薬の副作用など、治療で改善できる原因が隠れていることがあります。早めに確認することが、選択肢を守ることにつながります。
まず確認——「年のせいのもの忘れ」と「認知症のもの忘れ」の違い
最も重要な見分け方は、「体験の一部を忘れる」か「体験そのものを忘れる」かです。
| 比較 | 加齢によるもの忘れ | 認知症・MCIのもの忘れ |
|---|---|---|
| 忘れ方 | 体験の「一部」を忘れる (ヒントがあれば思い出せる) |
体験した「こと自体」を忘れる (ヒントがあっても思い出せない) |
| 具体例 | 「昨日の夕食のメニューを忘れた」 | 「昨日、夕食を食べたこと自体を忘れた」 |
| 自覚 | 「忘れた」と気づいている | 「忘れた」という自覚が薄れてくる |
| 日常生活 | 支障はない | 支障が出てくる(道に迷う・薬を飲み忘れるなど) |
| 進行 | ゆっくりで大きな変化はない | 時間とともに進行する |
気になるサインのチェックリスト
次のような変化が続いている・増えてきた場合は、早めの受診をおすすめします。
もの忘れ・認知機能のサインチェック
直前に話した内容を忘れてしまう
「ほら、あれ」が増えてきた
探し物が以前より格段に増えた
今日が何日か・何曜日かわからなくなる
近所のスーパーへの道がわからなくなった
買い物の計算・料理の段取りが難しくなった
趣味・テレビ・人との交流への意欲が落ちた
以前は穏やかだったのに激しく怒るようになった
「MCI(軽度認知障害)」の段階で気づくことが大切です
認知症と加齢の間に「MCI(軽度認知障害)」という段階があります。日常生活はなんとかできているが、記憶などの認知機能が低下している状態です。
MCIとはどんな状態?
なぜ早期発見が大切なのか
認知症は早く気づくほど選択肢が増える病気です。
緊急度の目安——次にとるべき行動
認知症に似た症状でも、治療で改善できる病気があります
「もの忘れ=認知症」と決めつけないことが大切です。次の病気は認知症と症状が似ていますが、適切な治療で大幅に改善できます。まず血液検査などで除外することが診断の第一歩です。
注意 うつ病・仮性認知症
うつ病による意欲低下・集中力低下・もの忘れは「仮性認知症」と呼ばれ、認知症と区別が難しい。気分の落ち込み・睡眠障害・食欲低下を伴う。抗うつ薬で改善できる
注意 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの不足により思考力・記憶力が低下する。倦怠感・寒がり・体重増加・むくみを伴う。血液検査(TSH・FT4)で診断。甲状腺ホルモン補充薬で改善
注意 慢性硬膜下血腫
頭をぶつけてから数週間後にもの忘れ・ぼんやり・歩行障害が出る。高齢者・血液をサラサラにする薬を飲んでいる方に多い。頭部CTで診断し、手術で回復できる
注意 薬の副作用
睡眠薬・抗不安薬・抗ヒスタミン薬・降圧薬などが認知機能を低下させることがある。新しい薬を始めた後にもの忘れが出た場合は薬の見直しで改善することも
注意 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
夜間の低酸素が脳機能を低下させ、日中の集中力・記憶力の低下を引き起こす。いびき・日中の眠気が目立つ。CPAP治療で認知機能が改善することがある
注意 ビタミンB₁₂欠乏・貧血
ビタミンB₁₂不足による末梢神経・脳機能の低下。高齢者・菜食主義の方・胃切除後に多い。血液検査で確認し、補充することで改善できる
⚠ アルツハイマー型認知症
最も多い認知症(約60〜70%)。アミロイドβの蓄積が原因。直近の記憶障害から始まり、徐々に進行。2023〜2024年にMCI段階に適応の新薬(レカネマブ・ドナネマブ)が登場
⚠ 血管性認知症
脳梗塞・脳出血による脳細胞の損傷が原因(約20%)。高血圧・心房細動・糖尿病の管理で進行を予防できる唯一の認知症。症状が段階的に悪化するのが特徴
レカネマブ(レケンビ®・2023年12月保険適用)とドナネマブ(キシンタ®・2024年11月承認)は、アルツハイマー病の原因物質(アミロイドβ)を除去し、認知機能の低下を約27〜29%抑制する「疾患修飾療法」です。ただしMCI・軽度認知症の段階のみが対象で、進行してからでは効果がありません。専門病院での投与となりますが、白岩医院から速やかにご紹介します。「気になったらすぐ受診」が最重要です。
白岩医院でできる初期評価
認知機能の変化に気づいたら、まずかかりつけ医で初期評価を受けることが大切です。白岩医院では以下の評価・検査を行い、必要に応じて専門医療機関へ紹介します。
| 検査・評価 | 内容 |
|---|---|
| 問診・生活状況の確認 | 本人・家族から症状の始まりと経過を丁寧に聞く。日常生活の変化(できなくなったこと)の把握が最重要 |
| 認知機能スクリーニング (MMSE・HDS-Rなど) |
記憶・見当識・計算・言語などを20〜30分で評価。点数で認知機能の段階を把握し、変化を追うベースラインにもなる |
| 血液検査(甲状腺・ビタミンB₁₂・血糖・貧血など) | 治療で改善できる認知機能低下の原因(甲状腺機能低下症・ビタミン欠乏・貧血・糖尿病など)を除外する |
| 頭部CT・MRI (専門病院紹介) |
脳萎縮の部位・脳梗塞・脳腫瘍・慢性硬膜下血腫などを確認。病型診断に必須 |
| 専門医療機関への紹介 (認知症疾患医療センター) |
精密な神経心理検査・脳血流SPECT・アミロイドPET(新薬適応評価)などが必要な場合、連携して紹介 |
認知機能の低下を遅らせるために——今からできること
認知症を完全に防ぐ方法はまだありませんが、生活習慣の改善でリスクを下げ、進行を遅らせることができると多くの研究が示しています。
最も根拠の強い予防策
あわせて大切なこと
家族の方へ——受診のきっかけと付き添いのポイント
「受診を嫌がる本人」への対応
「認知症だと思われたくない」という気持ちから受診を拒否するケースがよくあります。
「血圧や健康のチェックに行こう」と伝える
自然に相談を持ち込む
受診時に伝えてほしいこと
家族が診察に同席し、以下の情報を医師に伝えると診断が大きく進みます。
もの忘れ・認知機能の低下に関連する病気の説明
| 病気 | 認知機能との関係 | 詳細ページ |
|---|---|---|
| 認知症 | アルツハイマー型・血管性・レビー小体型など。早期発見で新薬の恩恵を受けやすい | → 認知症のページへ |
| 高血圧 | 中年期の高血圧管理が認知症予防の最重要策。血管性認知症の直接の原因にもなる | → 高血圧のページへ |
| 糖尿病 | 高血糖が脳血管・神経を傷め認知機能を低下させる。血糖管理が認知症予防に直結 | → 糖尿病のページへ |
| 脳梗塞・脳卒中の予防 | 脳血管障害が血管性認知症の原因。脳卒中予防が認知症予防にもなる | → 脳梗塞・脳卒中の予防ページへ |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 夜間の低酸素が脳機能を低下させる。CPAP治療で認知機能が改善することがある | → 睡眠時無呼吸症候群のページへ |
もの忘れ・認知機能の変化が気になったら、白岩医院にご相談ください
「まだ大丈夫かも」と思っているうちが最も大切な受診のタイミングです。認知機能の初期評価から、治療可能な原因の除外・専門医への紹介まで、かかりつけ医として丁寧にサポートします。
- ›最近もの忘れが増えた・同じことを繰り返すと家族に言われた
- ›日付・場所の感覚がぼんやりしてきた気がする
- ›家族の様子が「以前と違う」と感じている(一緒に受診を)
- ›認知症かもしれないが、怖くて病院に行けていない
- ›高血圧・糖尿病があり、認知症予防のためにも管理を続けたい
- ›新薬(レカネマブ・ドナネマブ)について詳しく知りたい
もの忘れは「気にしすぎ」でも「年のせい」でも、気になったときが受診のタイミングです。早く受診すればするほど、選択肢が増えます。白岩医院では高血圧・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群の管理を通じた認知症予防から、初期評価・専門医紹介まで一貫してサポートします。ご本人だけでなくご家族の方も、お気軽にご相談ください。
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