
急な冷え込みと熱めの湯、入浴時のふらつきが気になる方へ
長年の習慣である熱いお風呂に長くつかることを楽しみつつも、浴槽から出た瞬間のめまいに不安を感じる方は少なくありません。この記事では、寒暖差で血圧が上下する仕組みと緊急性の見極め方、家庭血圧や持病・服薬の記録を用いた相談の進め方、そして今夜から実践できる湯温41℃以下・10分以内を目安とした入浴の工夫を順に解説します。
この記事の要点まとめ
- 寒い脱衣所や熱めの湯は血圧変動につながることがあり、家庭血圧やふらつきの状況を記録して受診時に伝えます。
- 湯温は41℃以下、入浴は10分以内を目安にし、浴室を温め、手すりにつかまってゆっくり立ち上がります。
- ふらつきが繰り返す場合は医師へ相談し、意識の異常や胸痛、片側のしびれなどがあれば119番を検討します。
目次
- 入浴時のふらつきを「年のせい」で済ませないために
- 血圧の変化とふらつきを内科・循環器の視点で考える
- 今夜から始められる入浴の見直しと夫婦での声かけ
- 入浴の楽しみを続けるために暮らしに合う工夫を相談する
- よくある質問
- 参考文献
入浴時のふらつきを「年のせい」で済ませないために

高血圧は自覚症状がないまま進行しやすい病気ですが、放置すると心臓や脳の血管に負担をかけ続けます1。特に外気温が急に下がる季節は、住まいの中の温度差が広がりやすく、普段は落ち着いている方でも血圧の変動幅が大きくなりがちです1。ふらつきの原因は一つとは限りませんが、まずは寒暖差と湯温が身体にどう作用するのかを知り、ご自身の状態を確かめるきっかけにしてください。
寒い脱衣所と熱い湯で血圧が上下する仕組み
暖かい居間から冷え込んだ脱衣所や浴室へ移動すると、身体は熱を逃がさないように血管をギュッと縮めるため、血圧が急激に上昇します。その後、浴槽の熱いお湯につかると、今度は一転して手足や全身の血管が広がり、血圧が短時間で低下します2。
特に42℃以上の熱めの入浴は交感神経を刺激して身体への負担を大きくするため、38〜40℃程度のややぬるめのお湯にゆっくり入ることが勧められています2。お湯につかって血管が広がった状態で浴槽から急に立ち上がると、重力によって血液が下半身に集まり、脳へ行く血流が一時的に減って立ちくらみやふらつきが起こりやすくなります。高血圧や心臓の病気をお持ちの患者さまは、こうした血圧の乱高下による影響を受けやすいため、日頃の家庭血圧(目標は125/75mmHg未満、高血圧の基準は135/85mmHg以上)とあわせて注意を払う必要があります1。
救急要請を考える症状と、次の受診を待たず相談したい状態
入浴中や入浴後に体調の変化を感じた際は、すぐに救急車を呼ぶべき状態か、早めにかかりつけ医へ相談する状態かを区別して対応します。
| 状態・症状の目安 | とるべき行動 |
|---|---|
| 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い<br>胸の痛み・圧迫感、強い息苦しさがある<br>顔のゆがみ、片側の手足のしびれ、ろれつが回らない | 迷わず救急要請(119番)<br>※自分で運転して受診しない |
| 浴槽から立ち上がる際のふらつきを繰り返す<br>朝の家庭血圧が普段より高い日が続いている<br>軽い動作での動悸や息切れが気になり始めた | 次の定期受診を待たず、数日以内にかかりつけ医へ相談 |
表の上段にあるような、胸の強い苦しさや「顔の片側が下がる・片腕に力が入らない・言葉が出にくい(FASTのサイン)」といった症状が突然現れた場合は、心筋梗塞や脳卒中などの緊急性が高い病気が疑われます。ご自身やご家族の運転で病院へ向かうと移動中に容態が変わるおそれがあるため、ただちに119番へ連絡してください。救急車を呼ぶか迷う場合は、地域の救急相談窓口を利用して判断を仰ぐ方法もあります。
一方で、今は症状が治まっていても、入浴時のふらつきが何度も起こる場合や朝の血圧上昇が続く場合は、次の定期受診日まで我慢せず、早めに医療機関へご相談ください。
血圧の変化とふらつきを内科・循環器の視点で考える

家庭で測る血圧が135/85mmHg以上になる日が続いている場合や、以前はなかっためまい・動悸が加わった場合は、血管や心臓への負担が増しているサインかもしれません1。入浴という日常の場面で起きた小さな変化を、普段の体調や飲んでいるお薬と結びつけて考えることが、重大な発作を防ぐ第一歩となります。
入浴の相談では血圧だけでなく持病や服薬も伝える
入浴中のふらつきをご相談いただく際は、血圧の数値だけでなく、現在治療中の病気や服用しているお薬の内容もあわせて医師にお伝えください。
たとえば、血圧を下げるお薬(降圧薬)を飲んでいる方が「お風呂でふらつくから」と自己判断でお薬を止めたり量を減らしたりすると、かえって血圧が急上昇し、心臓や腎臓、脳の血管に大きな負担をかけることになりかねません。お薬手帳をご持参のうえ、入浴する時間帯と服薬のタイミングについても医師へ確認されることをお勧めします。
ふらつきの相談で検討される診察と検査
診察室での短い時間では捉えきれない一時的な脈の乱れ(不整脈)も、24時間ホルター心電図を用いることで日常生活の中の記録として確認できる場合があります。さらに、症状や身体の所見に応じて、心臓のポンプ機能を評価する心臓超音波検査(心エコー)や頸動脈エコー、貧血や腎機能・脂質などを調べる血液検査を組み合わせることもあります4。
ただし、ふらつきのある患者さま全員にすべての検査を行うわけではありません。また、これらの検査だけで原因がすべて判明するとは限らないため、お一人おひとりの症状や経過をうかがいながら必要な検査を選択し、さらなる精密検査が必要な際は連携する専門病院へご紹介いたします。
受診時に持参したい家庭血圧の記録と症状のメモ
診察の限られた時間で状態を正確に把握するため、毎日の家庭血圧の記録と、症状が出たときのメモをご持参いただくと相談がスムーズに進みます。
- 家庭血圧と脈拍の記録:朝(起床後・排尿後・朝食や服薬の前)と夜の1日2回測った数値
- 現在のお薬がわかるもの:お薬手帳、または服用中のお薬そのもの
- 症状が出た場面のメモ:いつ(入浴前・湯船から立ち上がった瞬間・脱衣所に出た後など)、どのくらいの湯温・入浴時間だったか、ふらつきが何分ほど続いたか
- ご家族から見た様子:顔色が悪かった、呼びかけにすぐ返事をしたかなど、同居のご家族が気づいた点
完璧な記録でなくても構いません。数日分のメモがあるだけでも、お薬の効き具合や生活の中での血圧の動きを推測する大切な手がかりになります。
ポイント
お薬の自己中断は血圧の急変を招くおそれがあります。家庭血圧の記録とお薬手帳を持参し、入浴時の様子をそのまま医師へお伝えください。
今夜から始められる入浴の見直しと夫婦での声かけ
ヒートショックや入浴時の血圧変動への備えは、大がかりな住宅改修を行わなくても、浴室の温め方や湯温・つかる時間の調整といった今夜からの工夫で始めることができます12。長年親しんできた入浴の習慣を急にすべて変えるのは難しいものですが、身体への負担を減らす目安を知り、できるところから少しずつ取り入れてみてください。なお、高血圧や心臓の病気などで通院中の方は、自己判断で生活習慣を大きく変える前に主治医へ相談しながら進めることが大切です。
暖房のない脱衣所と浴室を温める工夫
脱衣所や浴室に備え付けの暖房設備がないお住まいでは、お湯の蒸気(湯気)や入浴する時間帯の工夫で部屋ごとの温度差を和らげることができます。
お湯がたまった後、入浴する少し前まで浴槽のふたを開けておくと効果的です。一番風呂に入る際は浴室の床や壁が冷え切っているため、入る前にシャワーでお湯をかけて冷たさを取っておきましょう。
また、脱衣所に持ち運びができる小型の暖房器具を置く場合は、濡れたタオルが触れたり足元でつまずいたりしないよう、置き場所の安全を確かめてから使用してください。外気温が下がりきる夜遅い時間帯を避け、日中の暖かさが残る夕食前などの時間帯に入浴を済ませるのも一つの方法です。
湯温41℃以下・湯につかる時間10分以内を目安に
血圧の急な変動を抑えるため、お湯の温度は40℃前後(高くても41℃以下)、湯船につかる時間は10分以内を目安にします2。
畑仕事や外出で身体が冷えた後は、42℃以上の熱いお湯に肩まで長くつかりたくなるものですが、高温の入浴は血圧を大きく動かしてしまいます2。感覚だけに頼らず浴室に湯温計を浮かべたり、時計やタイマーを脱衣所に置いたりして、客観的な数字で確かめながら1℃ずつ湯温を調整してみてください。
浴槽へ入る前には、手や足先など心臓から遠い場所から順番に「かけ湯」をして、お湯の温度に身体を慣らします。また、食後すぐや飲酒後は血圧が下がりやすいため、食事や晩酌の直後にお風呂へ入るのは控え、入浴の前後にはコップ1杯程度の水分を摂るよう心がけましょう。
浴槽からゆっくり立ち上がる手順
湯船から出るときは、浴槽の縁や手すりにしっかりつかまり、ゆっくりと立ち上がることで、脳への血流が急に減るのを防ぎます。
まずは浴槽の縁を両手で持ち、いったん腰を浮かせて浴槽の縁に腰掛けるような姿勢をとり、そこで一呼吸置きます。めまいがないことを確かめてから、ゆっくりと足を洗い場へ出して立ち上がってください。
万が一、立ち上がった瞬間に「目の前が暗くなる」「ふわっとする」といった立ちくらみを感じた場合は、無理に歩いて脱衣所へ出ようとせず、その場にすぐしゃがみ込んで頭を低い位置に保ち、症状が治まるのを待ちます。
入浴前後の声かけと、離れて暮らす家族への相談
ご夫婦二人暮らしなど高齢の世帯では、入浴前に必ず「今から入るよ」と声を掛け合い、万が一の際にすぐ気づける環境を整えておくことが安心につながります。
あらかじめ「お風呂に入り始めてから20分くらいで声をかけるね」と夫婦で目安を決めておき、いつもより長引いている場合や物音がしない場合は、脱衣所から声をかけて様子を確かめます。もしものときに外からすぐ開けられるよう、浴室の扉の鍵はかけずに入浴してください。また、ご家族が外出していて家に一人きりになる時間帯の入浴はなるべく控えるようにしましょう。
ご夫婦だけでは浴室の異変に気づけるか不安がある場合や、入浴時のふらつきが続く場合は、一人で抱え込まず、離れて暮らすご家族にも現在の血圧や体調を共有し、医療機関への受診時に付き添いを頼むことも検討してみてください。
ポイント
「湯気で浴室を温める」「41℃以下・10分以内」「手すりを持って一呼吸置いてから立つ」「入る前に声をかける」の4つを今夜から意識してみましょう。
入浴の楽しみを続けるために暮らしに合う工夫を相談する
お風呂は一日の疲れを癒やす大切な時間であり、ご自身の血圧や体調に合った入り方を見つけることが、これからも安心してお風呂の楽しみを続けることにつながります。
住まいの環境や長年の生活リズムはお一人おひとり異なります。「熱いお風呂をすべて我慢しなければならない」と窮屈に考えるのではなく、現在のお身体の状態や住まいの寒暖差をうかがいながら、無理なく続けられる工夫を一緒に考えてまいります。生活習慣のアドバイスから、お薬の相談まで、患者さまのペースに合わせてサポートいたしますので、入浴時のふらつきや冬場の血圧が気になるときはお気軽に一度ご相談ください。
田村市の白岩医院で受診を申し込むまでの流れ
田村市や近隣エリアから当院への受診をご検討の際は、事前のご予約とWEB問診をご利用いただくことで、ご来院後のご案内がスムーズになります。
- ご予約方法:お電話、または公式サイトの「WEB予約」からお申し込みいただけます(健康診断や予防接種をご希望の場合はお電話でのご予約をお願いいたします)。
- 事前のWEB問診:ご来院前にスマートフォンやパソコンから問診票を入力できます。ご家族と一緒に症状を整理しながら入力する際にも便利です。
- 受診時の持ち物:マイナンバーカード(または健康保険証)、各種医療受給者証、お薬手帳(または服用中のお薬)、家庭血圧の記録や症状のメモをご持参ください。
なお、発熱や咳、強いだるさなど感染症が疑われる症状がある患者さまにつきましては、院内感染防止のため院外(お車での待機など)にて診察を行っております。その場合はご来院前に必ずお電話またはWEBからご予約のうえ、到着時にお電話でお知らせください。
当院ではお車でご来院いただけるよう、医院前と道を挟んだ場所に駐車場をご用意しております。最新の診療時間や休診日、詳しいアクセスにつきましては、公式サイトの案内ページでご確認ください。
よくある質問
Q1. 浴槽から立ち上がったときに一瞬ふらつきましたが、すぐに治まりました。受診したほうがよいですか?
A. すぐに治まった場合でも、入浴時のふらつきが繰り返し起こる場合や、普段より家庭血圧が高い日が続いている場合は、次の定期受診を待たずにかかりつけ医へご相談ください1。一時的な血圧の低下による立ちくらみのほか、不整脈や貧血、お薬の効き具合などが関係していることもあるため、家庭血圧の記録とお薬手帳を持参して医師の確認を受けることをお勧めします。
Q2. 血圧の薬を飲んでいますが、お風呂に入る前と後のどちらに飲むのがよいですか?
A. お薬を飲むタイミングは、処方されている薬の種類や1日の服用回数によって異なります。また、薬によっては副作用を防ぐために服用前後の入浴を避けるよう指示されるものもあります3。自己判断で飲む時間を変えたり休薬したりすると血圧が不安定になるおそれがあるため、必ず処方を受けた医師や薬剤師へご確認ください。
参考文献
1. 厚生労働省. 高血圧(e-ヘルスネット). https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-003
2. 杏林大学医学部付属病院. 寒さと睡眠. https://www.kyorin-u.ac.jp/hospital/introduction/kenkou/kenkou_26.html
3. 東京慈恵会医科大学西部医療センター. 小児科 アレルギー診療:花粉症,アレルギー性鼻炎. https://www.jikei.ac.jp/hospital/west-medical-center/sinryo/allergy/hay-fever.html
4. 第2章 血液検査. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/66/J-STAGE-2/66_17J2-6/_html/-char/ja
平成12年 福島県立医科大学卒業
平成13年 国立国際医療センター(現 国立国際医療研究センター) 内科
平成15年 心臓血管研究所附属病院 循環器内科
平成18年 太田西ノ内病院 循環器センター 循環器内科
平成22年 三春病院 内科 内科診療部長
平成24年 白岩医院 院長
日本循環器学会(循環器専門医)
日本心臓病学会
日本医師会認定産業医
田村福祉会 ときわ荘 嘱託医(非常勤)
学校医(幼稚園、小学校、中学校) ・産業医(市内7つの事業所) ・福島県警察医
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